医療知識の格差が、がん死亡率に影響する?
ハーバード大学公衆衛生大学院の准教授のK・ビスワナス博士によると、高所得者と低所得者との医療知識格差が、がん死亡率にまで影響していると報告しています。がんの約半分から3分の1は予防可能で、そのためには、病気予防の知識とその実践が不可欠といいます。
正確な医療知識は、発病後の医師や家族とのコミュニケーションにも影響し、予後を良好にするわけです。 例えば、アメリカの場合、すべてのがんの生存率は、黒人の55.2%に対して、白人は65.6%です。乳がんの罹患率は、白人女性の方が高いにもかかわらず、死亡率は黒人女性の方が高い。この差は医療情報の格差が原因だと博士は断言しています。
現在は、インターネットの全盛期です。誰もが世界中の膨大な情報の中から、知りたいキーワードひとつ入力すれば、検索エンジンがフル稼働して、関係する情報を瞬時に閲覧できるのです。
その情報の中に、あなたの知りたいたった一つの情報が、あなたの命を救う大切な情報かも知れません。納得のいくまで調べ上げ、あなたにとって、最良の治療法を手に入れましょう。
病院や医師を疑うのではなく、かといって任せっぱなしするのでもなく、主体的に情報を集め、納得できる治療を受けること、それが大切なのです。
思い込みが命取り!
問題は、医療情報にあまり関心ないか、病院や医者任せの人たちの間で「がんは予防できない、治らない」という悲観的なイメージを抱く人が増加することです。たった一つの情報があなたの命を左右するとしたら、あなたはどうされますか?
特にがんになると、さまざまな疑問や悩み、不安がつきまといます。病院はどこを選んだらいいのか、いい医者に巡り会いたい、治療が始まれば、この治療でいいだろうか等、病院への疑問や不安や、医師との関係づくりにも悩んでしまいます。
日本では、早期がんは手術でと言う傾向が強いと言われています。だから、手術を勧める医師も多いと思われます。しかし、最初の説明のとき、「手術しかない」と提案されても「ひとまず、家に帰って、家族や関係の人に相談してみたい」と言って、改めて返事する方がいいでしょう。
がんに関する、素朴な悩みや疑問を納得のいくまで相談したり、調べたりして、病院や医師まかせにしないことが大切です。そして、いつでも最良の治療法に巡りあえるよう情報収集することが大事です。
あなたやあなたのまわりにいる人からのちょっとしたアドバイスや、心遣いは、あなたにとってかけがえのない情報です。たった一つの情報があなたの命を救うことだってあるのですから...。
がんは人生最大の危機!
がんの場合、抗がん剤に代表されるように、副作用によるつらい治療が続きます。それを乗り越えていくためには、その治療が最善だと患者自身が納得する必要があります。
医師の説明で疑問や悩み、不安がなかなか取れないで迷った時は、セカンドオピニオンを利用することです。
日本人は、名の通った大病院ということだけで、任せてしまいがちですが、がん治療は生死をかけた闘いです。病院名ではなく、治療法や医師のレベルに迄こだわり、納得のいくまで調べていくことが、人生最大の危機を乗り越えるための、最初の一手になると考えるべきではないでしょうか?。
がんは、「最初の治療に生死のすべてがかかっている」と言っても過言ではありません。被害(負担)を最小限に食い止めるための最初の一手がすべてということです。チャンスは一度だけ、再発や転移が起これば取り返しが難しいからです。
がんの治療で一刻を争うことは滅多にありません。一週間や2週間、がんによっては数ヶ月、時間が経っても問題ないものもあります。
医師の言うままに手術をしてしまい、手術後に最と良い別の治療法があったとしても、後の祭りです。もし、手術を勧められたら、ほかの治療法(例えば、内視鏡や放射線治療)がないか、必ず聞くことです。
最近では、治癒効果の高い治療法が次々と開発されていますから、今は手術よりも身体的・時間的負担の小さい治療法を選ぶことができるのです。
適切な治療法が見つからないケースも出てきますが、決して諦めないでください。半年も経てば、新しい治療法が開発されたり、未承認の抗がん剤が承認されたり、さらには生活習慣を変えることだって大きな効果が立証されているからです。
セカンドオピニオンは患者の権利!
セカンドオピニオンとは、主治医から説明を受けた病気や治療方針に納得できない時、或いは本当に正しい見解かを知りたい時などに別の医師の意見を聞くことです。セカンドオピニオンは転院が前提ではありません。
セカンドオピニオンを主治医に出しにくいという人も多いですが、現在は、患者の当然の権利として考えられています。納得できないまま治療を受けて後悔するより、セカンドオピニオンを利用して、他の医師の意見を聞くべきです。
そして、後悔のない治療法を自分の手で見極めることが大切なのです。
セカンドオピニオンを求めたい方へのがん専門医からの回答または専門医の紹介や、がん治療に関する講演会、見学会などの開催、ニュースレターの発行など幅広くがん患者の悩みや不安をサポートする「
市民のためのがん治療の会」がありますので、是非、参考にしてみて下さい。
がん情報の集め方
がんを克服するためには、自分の病状や治療法の知識を集めることが大切になります。現在、がん治療は、急速な勢いで進歩していますので、がんとの闘いはまさに情報を如何に獲得するかの戦いなのです。
たったひとつの情報を知ったことで命が救われ、知らなかったことで生命の危険性を高めることが少なくありません。
がん情報の入手方法?
先ず、最初に知るべきことは、自分の病状を診断した医師に聞くことです。医師は患者に検査結果を伝えるときは、病状と今後の治療方針について説明するのが一般的です。
−−−−−−− 医師に確認すること −−−−−−−−−−
1.診断の根拠は何か?
2.どこのがんなのか?
3.がんの進行状況は?
4.どんな治療法があるのか?
5.どんな治療をしたいのか?
6.その治療を行う根拠や成功率は?
7.治療に伴う副作用や体の負担や不具合は?
−−−−−−− 患者側(同伴者)で配慮すること −−−−−
8.治療の経過を時系列に記録(後々役立つ)
9.高額医療費助成制度の有効活用
・事前に「健康保険制度限度額適用認定書」提出
10.免疫力を高める生活習慣
など聞いたり、調べたりすることは大切です。しかし、がんを告知されたショックのあまり、医師の説明はほとんど頭に入いっていなかったということが少なくありません。
従って、患者以外の家族、友人にお願いして、情報は確実に入手するよう心がけて下さい。
次に治療に関する情報源です。一番の情報源は、身近にある本やインターネットの情報は大変参考になります。本の情報は、時間が経つと古くなりますので、2〜3年以上前の本はあまり参考にならないと思ったほうが良いようです。
インターネットの情報では、以下のサイトがお勧めです。
1.
国立がんセンター
2.
癌有明病院
3.
がん情報サイト
4.
海外癌医療情報リファレンス
その他については、本サイトのコンテンツを参考にして下さい。
がん情報の信頼性、価値判断基準とは?
がんに関する情報は、調べれば調べるほど無限にあります。しかし、その情報の信憑性や信頼性が問題になります。それは、どんないい情報と言われるものであっても、その情報がその人にとって本当に有効なものであるか無いかは、本人が体験によって得る以外にありません。
より多くの人に効果のある情報を科学的に証明されたもの、
効果がある医療であることを証明する確実な情報を「エビデンス」(科学的根拠)といいます。
きちんとした調査・研究により目標とする効果があると証明されることが、その価値の判断基準になります。たとえば、がん検診においては、死亡率や罹患率の減少が証明できる「健康結果の改善・向上のための文献情報」となります。
たとえば、大腸がん検診の便潜血検査を受けると大腸がんで亡くなるリスクが60%以上減るといった情報があります。このような根拠がある場合には、「便潜血検査による大腸がん検診で死亡リスクが減るという科学的根拠がある」という言い方をしています。
この
科学的根拠に基づく、がん検診や治療の利点は、治療を受ける側にとって、がん死亡リスクが減るという利益があることが客観的に判断できる情報に基づいて医療が行われることになります。
つまり、医療を受ける患者や情報収集する側に、実際に利益があるかどうかを前もって判断できるということです。
科学的根拠の見極め方
科学的根拠をどうやって得るか、それには調査・研究の格付けが基準になります。最高ランクのものは、くじ引きなどにより無作為に2つに分けたグループを使って、効果(例えば、検診、治療薬など)を比較する
ランダム化比較試験と呼ばれるものです。
このランダム化比較試験は、行うことは最も難しいのですが、信頼性は最も高いとされています。従って、この方法で効果が確認されたものは、ほぼ確実な効果を期待できますので、がん克服のための情報として、欠かせません。
次に、信頼性の高い方法は、大勢の人を長期にわたって追跡調査する「
コホート研究」や「
症例対照研究」が代表的な方法です。
その次には、「
時系列・地域相関研究」などがあります。さらに「症例報告」などがあります。
一番ランクの低い位置にあるのが「専門家の意見」と位置づけされています。科学においては、専門家というのは科学的根拠がないものには通常は言及しないものです。
しかし、例外的に科学的根拠がなくても「私はこう考える」といった言動は例え専門家といえどもあるだろうと、一番下のランクに位置づけられています。
このようなランクづけは、臨床研究による科学的根拠についての国際標準になっていますので、多くの情報の中から先ずは、有効性のありそうな証拠になる信頼度の高い調査や研究があるかどうか、見極めることが大切になります。
科学的根拠の見極め方として、考え方としては分かったとても、本当に有効であるかどうかを示す調査や研究は、限られていると考えられます。
そこで、有効ながん情報は、副作用などの不利益と利益のバランスで、利益のほうが圧倒的に大きいと考えられる情報を入手することが大事になります。
不利益は、有効性と違ってなかなか大きさが判断しにくいものです。その大きさをどう評価するかは問題ですが、基本的には重大な不利益だけは避けなければなりません。
ですから、できるだけ丁寧に洗い出して、どんな不利益も見逃さないように心がけるしかありません。
情報のいいとこ取りは、自分にとっての利益だけを求めるためにとかく、いい面ばかりに気を取られる弱さがあり、これが落とし穴にもなります。
特に気をつけたいことは、専門家、研究者や医師といえども、不利益になる話は控えられ、良い面が強調される傾向があり得ますので、受益者負担にならないよう冷静になって、情報収集する目を普段から養っておくことが大切になります。