がん免疫治療薬「オプジーボ」とは
2015年12月、新しいがん免疫治療薬「オプジーボ」が、皮膚がんの一つ、悪性黒色腫に次いで、「切除不能な進行した肺がんの一部」にも保険診療で使えるようになりました。
オプジーボは、抗PD-1抗体と呼ばれるお薬です。オプジーボはT細胞のPD-1に結合して、がん細胞から作り出されたPD-L1との結合を阻止することにより、免疫機能にブレーキがかからないようにして、T細胞のがん細胞を攻撃する力を高めます。
オプジーボは従来の薬より優れた延命効果を示すものの治癒を得ること
は難しいとされ、この薬を長く使用する可能性があり、薬価がIコース
約130万円、1年使うと約3,500万円と極めて高くなります。
薬剤費が超高額だということが話題となりました。肺がんの場合、標準的な体重の人にオプジーボ、商品名「キイトルーダ」を2週間間隔で1年間使い続けて、薬剤費は1500万円以上(個人負担は平均年収の世帯では月44,000円になっています。
商品によって、対象は悪性黒色腫の皮膚がん、肺がんの一部、胃がん、腎臓がんで手術困難な場合のみ適用されます。
「オプジーボ」の副作用とは
厚労省に2016年7月22日、肺がんの治療で」新薬「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)を使った後に、別の肺がん治療薬で治療したところ、重い副作用が8例出て、そのうちの3人が死亡したとして、注意喚起と情報提供を呼びかける文書を提出した。(朝日新聞2016年7月23日付)
厚労省によると、8例はいずれも、オプジーボを使用後に「上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)」を投与したところ、間質性肺疾患を起こし、これがもとで亡くなっています。
厚労省は2剤を続けて使ったことで副作用のリスクが増大したかは不明としながらも、慎重に投与するよう改めて要請しています。
副作用の特徴は、和歌山県立医科大学の山本教授によると「自分の免疫で臓器を攻撃する自己免疫疾患が出やすくなることです。
甲状腺機能障害、大腸炎、T型糖尿病などです。肺が繊維化して働くなる間質性肺炎はもっとも注意すべき副作用です。」
筋力が低下する重症筋無力症や、I型糖尿病など特異な副作用があり、有効症例が約20%と限定されるなどの問題もあり、新薬の適用については現状ではあまりに課題が大きい。
薬価が極端に高い薬剤の開発は、今後も続くため、日本の医療財政に深刻な影響は免れない状況が続いており、ガン治療費はこのところ下がるところを知りません。
「オプジーボ」の動向
ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、これまでに有効性や安全性が実証されてきた新薬と同等と認められた低価格なお薬です。これに対し、オプジーボは新薬であるがために、未知の副作用は付き物だと考えるべきです。
オプジーボは、小野薬品工業が開発したもので、2014年に皮膚がんで保険適用され、患者の2,3割に効果が認められています。
さらに、肺がんへの適用が認められ想定患者数は、30倍以上の約15,000人に増加しています。
今後の課題は、「さまざまなガンに対してがん免疫治療薬をどの段階で使うべきか、この薬が効く患者を予測するのに役立つ指標などがあげられます。」
とは言え、保険の利かない、科学的に効果が証明されていない自由診療に深入りすることにも注意が必要です。
画期的な新薬オブジーボ
オプジーボの凄いところは、がんを「異物」として攻撃するよう誘導することで、大規模な臨床試験で、発症後の予後が特に悪いことで知られる悪性黒色腫などで、劇的な腫瘍縮小効果を実証したことにあります。
ここ10年来、抗がん剤開発の主流だった分子標的薬よりも、さまざまなガンに効く可能性がある点も特徴です。
画期的な「がん免疫療法」として大きな期待を集めているオプジーボは、2012年、最高峰の臨床医学雑誌「New England Journal of Medicine」誌に報告され、論説では、「過去30年で試みられた多くのがん免疫療法で、最も高い奏効率」と評されています。
オブジーボの重大な副作用への注意
オプジーボには、重大な副作用への注意が必要です。T細胞のブレーキが解除されると免疫が過剰になって、T細胞が正常な組織にも影響を与えてしまう可能性です。
重大な副作用には間質性肺炎や肝機能障害、甲状腺機能障害、大腸の炎症などが報告されているのです。間質性肺炎では死者もでています。
オプジーボが使える医療機関には、皮膚がんの指導専門医がいることや、間質性肺炎などの副作用に対応できる診療科との連携がとれることなどの条件が付けられています。
オプジーボは投与した次の日から13 日間は休薬します。投与日と休薬期間をあわせた14 日間を1コースとして、繰り返し投与します。これは、オプジーボは重大な副作用を引き起こす可能性があるためです。
医療財政を破綻に招く超高額なオブジーボ
オプジーボは月額約270〜300万円とされており、年間一人当たり3,500万円の治療費がかかることになります。
ところで、2016年11月には、今後半額へ異例の緊急値下げを決定しました。現役世代の患者の負担限度額は、年収に応じて5段階に分かれています。
ちなみに、体重70Kgの患者が同薬を月2回投与した場合、自己負担額は月に約35,000円から約280,000円になります。
保険医療対象であるため、実際の患者さんの支払いは、高額療養費制度のおかげで、自己負担額は数万円〜10万円強で済みます。
代わりに健康保険協会などが負担することになるため、マクロに見れば社会全体でこの費用を負担する必要があることには変わりありません。
仮に想定される肺がん患者全て(15,000人)がオプジーボを使用すれば、6,300億円という金額になります。諸外国では、富裕層の一部でしか利用できない状況の中、費用対効果の面からも高額の新薬オプジーボの使い方に、「いのちの値段」を見つめる時がきているように思われます。
現在、年間40兆円を超える治療費に医療財政は行き詰っています。オブジーボの費用対効果、命に関わるリスクの高い副作用など、課題も大きくモット何とかならないのか!と、言いたい気持ちになってしまいます。
財政を圧迫する高額医療費の負担のツケは、世代にわたって背負っていくことになります。あなたがガン患者だったら、もし大切な家族が患者だったら、さてあなたはどうされますか?