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分子標的薬で薬物療法が変わる!

 

 


新しい抗ガン剤「分子標的薬」の登場!


 国民の3人に一人はガンで亡くなる時代を迎えています。これまで抗ガン剤といえば、副作用による患者の体への負担が大きいことで知られています。これに対して、ガンだけを目標に攻撃する新しいタイプの薬剤「分子標的薬」が登場しました。

 抗ガン剤が登場してから、すでに50年あまり経っています。中でも進歩が著しいのが薬物療法かもしれません。



 細胞の表面には細胞の働きを制御するシグナル伝達を受けるポストに当たる受容体があります。ガン細胞には、特有のポスト(たんぱく質の分子)が存在することも分かっています。このポストから情報が届くことで、がん細胞の増殖が促進されるといいます。

 そこで、このポストの働きをなくすことで、ガン細胞の分裂を止めてしまおうというのが、分子標的薬療法の考え方です。ポストの働きを消す薬として用いられるのが分子標的薬と呼ばれるもので、現在、乳がんの治療などの試みられています。

■ 従来の抗ガン剤と分子標的薬の違い
      従来の抗ガン剤 分子標的薬
作用メカニズム DNAなどの合成や修復、細胞の分裂や増殖過程に作用し、ガン細胞を殺す ガン細胞の増殖、転移などにかかわる分子を標的にそれを阻害し、がんの増殖を抑えたり、進展を阻害する。
ガン細胞への
特異的作用
低い 高い
抗腫瘍効果 期待 期待
種 類 アルキル剤、抗ガン性抗生物質、代謝拮抗薬、植物アルカロイドなど 抗体製剤、血管新生阻害剤、シグナル伝達阻害剤など
長期投与 できない できる
副作用(全般) 重篤なものもある 特殊な副作用が出ることもある
骨髄抑制 高頻度 ほとんど出ない
心毒性、腎毒性脱毛、口内炎 高頻度 薬剤により、無特徴的な副作用
悪心・嘔吐 高頻度 消化器症状が出る場合もある

5年生存率がアップしたガンもある


 これまで、抗ガン剤治療は他の治療を補助する脇役でした。今でも手術や放射線療法などをサポートする補助療法として行われることが少なくありません。

分子標的薬の登場により、薬剤だけでも十分に高い効果を得られるケースも出てきました。もともと手術の対象ではない、白血球や悪性リンパ腫などの血液のガンでは、薬物療法が中心でしたが、分子標的薬が開発されてから、薬物療法だけでも治療が期待できるようになりました。

 例えば、慢性骨髄性白血病は振興すればするほどちりょうが困難にになりますが、分子標的薬が使えるようになってからは治療する人が増えています。悪性リンパ腫もB細胞型のタイプでは、標準的な化学療法に分子標的薬を上乗せすることで、5年生存率が20%アップしました。

 治癒するまでは行かなくても、再発率が低下する、長期生存が期待できるなど、薬物療法の有用性が確認されたガンも増えています。これから先、医学の進歩でさらに高い効果が得られる薬剤が開発されれば、ガンの治療で薬物療法の果たす役割はもっと大きくなると期待されています。

いまだ、延命効果を証明する薬しか開発できていない


 最新の抗ガン剤である分子標的薬(ソラフェニブ)は、治療の難しい腎細胞がんの画期的な薬といわれました。しかし、この薬の臨床試験結果、薬を投与した人、投与しなかった人、いずれも時間の経過とともに、生存率が下がっています。 どちらも7割近くの人が2年以内に亡くなっています。

 現状では、転移がんのほとんどは、数ヶ月単位の延命効果を証明する薬しか開発できていないのです。

注目される分子標的薬の効果は?


まずは、抗がん剤 最新事情について「分子標的薬」の動画をご覧下さい。


 固形がんでも、分子標的薬は、肺がん、大腸がん、乳がんなどの治療目的で開発され、認可されています。しかし、どれも治療効果のほどはパッとしないとしています。

 日本で世界に先駆け認可された進行期肺がん治療用の治療薬「製品名:イレッサ」は、販売するとすぐに、多くの患者が、肺合併症で死亡し、その毒性が社会問題化したことがあります。

 分子標的薬の中で最も成功したのは慢性骨髄生白血病に対する「製品名:グリベック」です。毒性が少なくほとんどの患者に延命効果があり治療薬として理想とされていますがあまりに高価なのが問題です。

 慶応大学の近藤誠先生によれば、胃がんや肺がんなどのようにがんが塊をつくる固形がんの分子標的薬は認可されていてもその効力はないに等しいと指摘しています。

血管新生阻害薬の実用化と費用削減に期待!


 ガン細胞は、正常な細胞に比べて、酸素と栄養分をたくさん必要とする性質を持っています。そのために、ガンは、まわりに新しい血管(新生血管)をつくり、多量に必要とする酸素と栄養分を自前で確保しようとします。

 このようなガン特有の新生血管がつくられることを阻止するために用いられる薬が血管新生阻害薬です。酸欠状態、栄養不足で死滅させてしまうものです。

 このような血管新生阻害薬についても研究が進み、今後は盛んに開発されていくとみられています。一部の薬は実用化され、臨床の場で使われていますが、薬代の自己負担が毎月40万円以上もかかるようです。

(参考・引用文献)
 ■ 「がんを薬で治す」朝日新聞出版
   癌研有明病院の再診薬物療法を徹底解説!!
   抗ガン剤・分子標的薬・ホルモン剤
 ■ NHKスペシャル「立花 隆 思索ドキュメント 生と死の謎に挑む」
   特集ここまでわかってきた「がん治療」最前線
 ■ PHP「ほんとうの時代」
   特集 ここまでわかってきた「がん治療」最前線

 

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